片雲さくら

永遠の0 / 百田 尚樹

司法試験に4度も落ち、目的を失ってニート生活を謳歌していた健太郎はフリーライターの姉にバイト代わりに彼らの実の祖父のことを調べないかと持ちかけられる。
祖母が亡くなった時、その身体にしがみついて号泣した祖父は実は血のつながりもなく、祖母との結婚生活も戦争のため短かったと聞く実の祖父の過去に最初は興味もなかった健太郎だが…。

 

愛する妻のために、娘のために生きて帰りたいです。
思っていても言えない言葉だったろう時代に、堂々とそう言ってたという祖父である宮部。初めに会った老人からははっきりと嫌いだったと、しかも臆病者だったと言われ、過去を探ることに萎えてしまう姉弟。
何故そんなにも生きることを強く望んでいたのに、特攻を志願したのか。血の繋がりはないものの祖父と思っている人がすでにいるだけに、存在のない人間の過去を知るというのは、スゴイことだなと思った。

 

しかし、何人もの人に話を聞くうちに臆病者ということだけではないことも見えてくる。
いや、どうだろう。そういう時期もあって、そういう風に見える人もいたけど、っていうことなのかもしれないし、変化もあったし、人の眼も違ったんじゃないかとも思う。

 

それより最初に萎えるのが、「特攻隊はテロリストと同じだ」という意見。
戦争ものを敬遠してるので、そんな意見があるなんてことは初耳だが、頭おかしいんじゃないかと思った。ものすごく腹が立って、しかもこんなことを堂々というのが新聞記者だってことにさらに頭にきた。
これについては、気持ちよいほどスカッとこのバカジャーナリストを切ってくれる老人がいたので、よかった。
それにしても字面しか信じないなんて、ペンで戦うべき者が、そんな浅い人間性をよくも吐露出来るもんだと思ったりした。

 

戦争は知らない。
赤紙で死地へ旅立つ夫やわが子を、万歳で送り出したというのはよく見たり聞いたりもした。でもそのまま受け取る人なんて、いくら戦争を知らない世代だからって、まんま受け止める人なんかいるんだろうか。
人前ではそうしていたのかもしれないけど、誰もいないところでは絶対泣いてただろうと思うもの。
一緒に暮らしていた家族が遠くへ行くというだけでも、切ない気持になるものなのに、家族よりも国や天皇陛下だったって人がそんなに多く居るわけがない。
『野麦峠』や『おしん』がフィクションなのはわかっていても、口減らしのために農家の娘たちが売られた時代があったとしても。

 

宮部を語る者たちは、自分のことも振り返ってその時代を、その当時の自分を語る。
自ら特攻を喜んで引き受けた若者などいなかった。誰もがそう語る。
「生きて帰ってきてはくださらないのですか?」
「伊藤少尉は立派な男でした」

そんなセリフにさえ、涙が滲んでしまうほど、いろいろな人の想いが織り込められている。人それぞれの事情がある。
桜花というのを初めて知った。ぞっとした。その老人の話に涙した。

 

沖縄基地の名前は、活躍した米兵の名前が付いているのだと小説で読んだ。沖縄を蹂躙した者の名前を堂々と使える国なのだと、そんなことを思い出した。

 

「戦争に殺されたのではない、海軍に殺されたのだ。」
そのセリフが強く残った。
もちろんこの本は小説であり、事実ではないだろう。けど、これを読むと、その当時の事実として描かれたものを、それ一つだけで鵜呑みにしてはいけないのだろうなということはわかる。
ただ、話は長いかなと思う。インタービューとしては、病床の人間にそんなに語れるかとか、整然としすぎてるとか、「繰り返すが…」をどの人も頻繁に使うことなんかがちと気になった。

 

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Comment
asami
2010/11/20 10:05 AM
こんにちは。
永遠の0読みましたか。

死にたくない。生きて帰りたいって口に出す事で臆病者と言われる時代って、どんなだったんだろうって思います。
お国のためと洗脳され命を落とす事が名誉だと信じて死んでいった多くの若者たちがほんとうに哀れでなりません。
本人たちはもちろんですが母親は身を切られる思いだったと思います。

こんなことが数十年前の日本で本当に起こっていたなんて信じられない。そのおかげで今のあたしたちの暮らしがあるんだろうけど、戦争はあまりにも悲惨すぎますね。

満天
2010/11/22 1:43 PM
官房長官の…「自衛隊は…」云々発言
アレも時代の名残っす
当時、学生運動の盛んだったアノ頃、皆が言っていた言葉なんどす。
本書の「臆病者」発言も、何時までも時代を引きずっている人の発言なんだろうな〜
どうしても、その当時、自分が信じた言葉を何時までも信じていたい気持ち…解らんでもないです。
そうしていないと、あの時の自分を自分で否定してしまう気がするんでしょう
そんな時代が来ないことを、祈るばかりですだ

さくら
2010/11/24 1:48 AM
asamiさん、こんばんは。
asamiさんのおかげで読むべき本を、ちゃんと読む機会があって良かったと思います。
ありがとうございます。

ホントに悲惨ですね、戦争って。
その若さで零戦のパイロットに、しかも特攻にだなんて。
そして本音も言えない本人たちと、その家族や恋人を思うと、苦い気持ちになります。

今日もニュースを見ながらモヤモヤしてましたが、
モヤモヤは意思にはならず、言葉にならないままですが…。

さくら
2010/11/24 1:59 AM
満天どん、こんばんは。
今日、「失言」と「放言」の違いというのもをワイドショーでやってたので、ナルホドと思いつつ、
受け止める側にとってはどれも「暴言」でしかないことをわかってない人間が多いんだろうってことを考えてました。

> その当時、自分が信じた言葉を何時までも信じていたい気持ち…解らんでもないです。
そうだろうと思う。否定もしない。
小さい土俵で身に沁みてるからな。
100人が100人そうでないってだけで、たぶん、キケンなバランスなんだろうけどね。

It comments.









    
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性懲りもなく、取り上げられていたので読みました。 自分の実のお爺さんが特攻隊で命
うろうろ日記 | 2010/11/19 6:43 PM
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