片雲さくら

ドラゴン・ティアーズ

評価:
石田 衣良
文藝春秋
¥ 1,600
(2009-08-07)
もはや・・・
ラストにどんでん返し

見えるはずの見えない人間・透明人間が街には増えている。
死に至る病・貧乏。底辺だという自覚を持って、ギリギリの生活をしているものでも、探せばまだその下で生きているものもいるという現実。
IWGP第9弾もまた、経済と労働について、かな。

 

悪徳エステティシャンと被害者同盟「キャッチャー・オン・ザ・目白通り」。
減らないですよねぇ。オレオレ詐欺より昔からあるし、手口もそれほど変わらないのに、どうにも減らない犯罪、キャッチセールスと悪徳商法。
そして常に出る結論というのが「騙す人より騙されるほうが悪い」
それは単なる戒めであって、心の隙間ができてぼんやり歩いているときにも常に警戒して歩いているほど、ギチギチではないということで赦せてしまいそうなバランスでもある。いい悪いの問題でもないかもしれん、そんなことしか思わんね。

 

ホームレスを食い物にする失業保険詐欺「家なき者のパレード」
こういう連載ものって、ミステリー漫画と一緒でかなり登場人物のものわかりと勘の良さに頼ってさくさく話が進む、「ああありきたりのネタで」というのを登場人物で味付けしているようなものだろうと思ってしまうと、寂しいのだけど、こんなにそぎ落として事件のあらましを、現実のことと捉えることができる人がどれくらいいるのかなぁと、人ごとながら思った。
20年前に読んだミステリーと同じ手口なんで、どうしても比べてしまうよね。
しのぎのために生み出したヤクザの仕組みが、今でも正規の労災としてあるのかってちょっと驚いたけど。裏社会って実は見えないところで役だっていて、下手に排除してしまうと日本経済って動かなくなってしまうんでしょうか? アホな私は真剣に考えてしまいましたよ。

 

彼女いない歴28年サラリーマンの奮闘「出会い系サンタクロース」
一時間4千円。出会いは売っているという話。確かに情報も物もあふれているこの時代、なにが足りないってまっさきに思うのは老若男女統一で「出会い」というのかもしれない。
それにしても「高い橋の上で出会った恋愛」は、やっぱり橋を渡りきったら幻じゃないかと思う。
「そんなもんよねぇ」とため息つきながら、つまらん再放送をみながらせんべい齧って専業主婦を全うする気分になれたら、それはそれでめっけもんなんだろうけどね。

 

池袋の夜に身を沈める中国人美少女「ドラゴン・ティアーズ 龍涙」
ああれ? このシリーズで久々に泣くとは思わなかった。
Gボーイズのキングの側近たちは、マコトがおふくろさんのことを悪くいうと、狼のように唸る。実はマコトよりもおふくろさんのほうが人気があるのだと前の話で出てきたが、なるほど出てくるたびにこの気風の良さと心意気、江戸っこ気質に改めて惚れてしまうんだが、今回はさすがだと思った。

 

中国から研修生という名で送りこまれてくる人間たち。それは、職がないと嘆く日本人たちがしたがらない3K仕事を時給二百円台でさせられている寒村からの労働者たちのことだった。
工場から逃げ出した一人の少女のために連帯責任として250名の強制送還と斡旋会社へのペナルティ。マコトは斡旋組織の人間に力を貸すつもりで動き出すが、池袋にあふれる中国人の裏社会・東龍の人間と会い、研修生たちの過酷な労働条件を知って、動けなくなる。

 

7か月ですか、失業状態だった私としてもいろいろ考えながら読みました。
仕事がないといいながらも、文句さえいわなければ本当はいくらでもあることは知っている。時給850円の仕事を6時間するために、交通費を1000円かけてでもやってくる日雇派遣労働者もいる。職業訓練所というものがあるのも知っている。介護のお仕事は、はちきれんばかりの求人だということも知っている。それでも彼らはその仕事はやりたがらない。できる仕事とできない仕事はわかっているからという人もいる。確かにそのとおりだ。
彼らの多くが就きたい仕事は、中国に作られた工場のお陰でほとんど国内にはない。国内から工場を移設できない企業は逆に、人を呼び寄せ収監する。介護も東アジアから人が増えているそうだ。


時給二百円台の研修生、これはもう何年も前から留学制度という名の不可解な、大学を裕福にするための法律のせいで増えた問題(とは書いてなかったけど、元はそこだよね)。未だに未着手の問題なのかと思うと、ここで政権が変わったことでどんな色を生むのか。まだ知らないふりをされるのか。

 

日本は貧しい国だと思う。けれど「死に至る病・貧乏」は家族末代まで伝染する仕組みではない。そのはず。日本だけでなく、この「下のものがさらに下のものを食い物にする仕組み」が、どうにか変わるといいなと願う。

 

黒を纏った元中国人のリン。納得ずくのいい仕事ではないけれど、それでも割り切って仕事をしている。そういうもんかもしれない。
4人の食卓で、「ああそうだったのか」と涙が出た。毎回、こういう解決法は望めないだろうけど、最後はやっぱり「人」だと思う。ありきたりだといってしまえばそれまでだけど、そういう結論でもやっぱり涙が出る。
いい人との巡り合いというのは、何にも代えがたいものだと思う。
私もいい春を迎えたいです。


 

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