片雲さくら

村田エフェンディ滞土録

評価:
梨木 香歩
角川書店
¥ 500
(2007-05)
まさに青春
読後感がとてもいい
出会って良かった。

トルコのスタンブールに留学した村田。博物館に働きながら考古学の勉強をしている。下宿先は他国他宗教で、同じ勉学に没頭しながらも話題も考え方もそれぞれ違う。
そんな彼らの何気ない日常と会話、トルコの人の習慣。宗教。食べ物。
ときどきやってくる日本人や、友人知人たちと付き合う村田だが、彼の回りで起こることは果たしてなんなのか。
1899年、戦争の起こるちょっと前の話。

 

そう、トルコって謎なんである。
世界三大料理に数え上げられているということは、それなりに開港されていた世界的都市だったはずであるが、世界史でも宗教でも考古学でも、「概要」と言われるものからはカスリもしない国なんである。
おかしいじゃないか。「美味いよな」に同意するものが居たはずなのに、食以外が外に伝承していないなんて。ってか、トルコ料理もぜんぜん知らないんだけどね。
作中では「油っぽい」という評価しかなく、美味そうなものを村田は食ってないところもますます気になる。
やっぱり戦争? 帝国だった時代とは違ってしまったのだろうか。偶像ではないってところで、歴史的にもなんにも残してこなかったんだろうか。


無学はさておき。
家守綺譚』から妄想した“村田像”とはだいぶかけ離れておりました。

正直言って、ちっさい男って印象でしたね。あちらの作品が、あるがままを受け入れ、大して騒ぐこともせず平穏にすべてを受け入れていた印象に対して、こちらでのできごとはいちいちが“しこり”となるべく影を落とすような、小さな不快感や不安とともに起こる現象なこと。
それ以前に、“神”の領域のものが“暴れる”ってところで少し興っていることが違うのかもしれないけど、不穏なのである。
まぁ、宗教や歴史の話となると日本人としては、ディベートを戦わせるほど固執したものがあるわけではない。かと言って正直、くどくどと続く他文化を黙って聞いているほど大人しい気質でもないってところなのだろうか。
「うさんくさい」そう思う村田の気持ちに引っ張られる。しりごみする彼の気持ちに納得するので、それほど面白い話ではないのだ。

 

そのせいか、高堂と綿貫が出てくるとやたらホッとした。村田氏はもう少し、彼らと仲良くして柔軟になったほうが、生きやすいのではなかろうか。

 

この味噌玉というのは、彼の家に先祖代々伝わる兵糧食だそうで(P46)
記憶が正しければ、信長が腰に下げてた兵糧食は味噌玉だという話だ。山田氏、武家の出だというがまさか?
これはすんごい美味しそうだよねぇ。木下氏が涙を流すのもわかる気がした。

 

「人は過ちを繰り返す。繰り返すことで何度も何度も学ばねばならない。人が繰り返さなくなったとき、それは全ての終焉です」(P97)
「私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない」(P219)
ディミィトリスの繊細な言葉が残った。

 

それにしても、辞書引きながらの読書でしたねぇ。親炙、読み仮名ふられても意味はわからんだろ…。他、カタカナで意味不明なものがありました(涙
小6の時、サンタにプレゼントされた辞書では載ってない言葉もありましたねぇ。注釈も少し少なかった気がします。普通に理解できる人がどれほどいるのだろう。もう少し校閲が入ってもよかったのではと思ったり。

 

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Comment
nanaco☆
2009/08/01 8:42 AM
前にさくらさんから教えてもらった「家守綺譚」が、
も〜〜永久保存版にしたいぐらい良かったので、、、
繋がりがあるというこの本も、ついつい買っちゃいました♪
この本の表紙、なんだか妙に笑えます。

確かに「家守…」の村田像って、デッカイ男ってイメージ!
…でもちっさい男だったんですね(笑)
それを念頭に置いて心して読むことにしまっす(^^ゞ

トルコ料理ってケバブしか思い浮かびません〜^^;
たまに夏祭りとかでお店出してたりするんですよねぇ。
残念ながらまだ食したことはないですが…

さくら
2009/08/01 2:47 PM
nanacoさん、こんにちは。
「家守綺譚」は私も永久保存版ですね〜、お気に入りです。
表紙のかわいらしさを見るとなんか、本文挿絵とのギャップが少々…。
雰囲気としては本文のがあっている気がしますけど、
これはこれで好きですね。

>確かに「家守…」の村田像って、デッカイ男ってイメージ!
そうなんですよ。どうもあれに出てくる人は皆飄々としてたし、なんでも受け入れるって器のデカさを感じたので、
こちらの村田氏は「アレ?」でしたねぇ。

夏祭りとかありそうですねぇ。
今度から気にとめて、チャレンジしてみようと思います。

asagi
2009/08/01 5:20 PM
さくらさん、こんにちは。
TB&コメント、どうもありがとうございましたっm(__)m
7月に読んだ本のいちばんのお気に入りが「家守綺譚」っていうのもすっごく嬉しいです(*^^*)


トルコって興味深い国ですよねぇ。
むか〜し、トルコ在住の日本人の女の子と文通してたことがあって、その時にいろいろ聞いてみたんですが、面白かったですよ〜。

遺跡がたくさんあるのが羨ましかった!!!
そして、おもちのようにのびるという不思議なアイスを食べてみたいと思いました(^^)

>村田氏はもう少し、彼らと仲良くして柔軟になったほうが

そうそう、綿貫と高堂は肝が据わってておおらかな印象なんですよね。
村田は、なんというか、生真面目で繊細。
あ、生真面目なのはあの二人もか(笑)
でも、彼らには遊び心がある。

さくら
2009/08/03 12:56 AM
asagiさん、こんばんは。
よい本を紹介いただきまして、本当にありがとうございます。
トルコという国の魅力と「家守綺譚」の二人ということで、
競馬馬のように視界が狭いレビューになってしまいましたが、
私の中での主役はやっぱり鸚鵡だった気がします。
夫人の手紙の中でムハンマドを見つけられた理由あたりでもう完璧に主役をくってた気がします。

>でも、彼らには遊び心がある。
ああ、その差なんでしょうかね。
稲荷が嫌な理由から考えると、彼らと同じくらいのびのび育っても良かったのに、
どこで違っちゃったんでしょうかね。
不思議なものですね。

It comments.









    
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